新しい畳の匂い

移住の記録

いよいよ家を探しに、飛行機に乗った。土地勘のない場所で、姉のアドバイスを頼りにしながら、ある場所に絞って検索した。

3月という一年で一番動きのある時期、見ていた物件が分単位で消えていく。収穫が何もない焦りの中、退職まで数日、残された仕事もあるので、一旦戻ることにした。

数日後、退職の余韻にひたる暇もなく、退職の翌日、家探しのため再び飛行機に乗った。まずは、10年よく頑張った!と自分を褒めておこう。

前回、1件だけ仮予約できた物件の内覧に、期待と不安でドキドキしながら向かった。駅からは10分以内で立地は満点。恐る恐る中に入ると、退去から数日で清掃前だったこともあり、驚く状態だった。ここに人が住んでいたのか……畳はボロボロ、壁紙は真っ黒、エアコンは埃のベールに包まれている。清掃は後に大家さんと打ち合わせのうえ行われるとのことで、ここは保険としてキープしつつ、保留となった。

ここからが、地獄の始まり。路線を広げて探してみたが、物件数も少ない上に、希望のところはすでに契約済みがほとんど。そして私は今、「無職」。無職の場合、預金審査というものがあるらしく、預金残高が300〜400万くらいの口座の写しを添付する。金額は目安で基準はないらしい。不動産屋さんも全貌はわからないとのことだった。

団地の賃貸物件もみた。昭和の時代、「マンション」というものができ始めの頃の公団住宅。古くはあるものの、キレイに管理されていて、前回みた物件よりずっと気持ちのいいものだった。団地が一つの街になっていて、安心感もある。その物件も考えつつ。

最後に内覧した物件は、駅から徒歩10分圏内、急な坂道を下った先にあった。目の前に城跡地がある、自然が豊かな場所。築27年の決して新しい物件ではないけど、中は綺麗にリフォームされていて、新しい畳の匂いがした。

娘も、「ここなら生活のイメージができるね」と、笑顔になった。

今はこの物件の審査中。審査が通らなければ、またスタートに戻る。崖っぷちの状態で、私は娘を親戚に預けて、また飛行機に乗る。

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